歌を心で聴く…ということ

私の友達には、凄い人たちがいます。
歌を耳や目で聴くのではなく、心で聴く人たちなのです。

何かのライヴ(殆どボーカル)に一緒に行き、感想を聞いたりすると、凄い答えが返ってくるときがあります。

<その1>
「どうだった~?」と私。
「日本人をバカにしているような気がしたかなぁ…。」とAちゃんがつまらなさそうに言いました。ライヴに誘ったことを、こんなに後悔したことはありませんでした。

もう何年も前に、アメリカ人シンガーのライヴを聴きに行ったときのことです。場所は「Body & Soul」という老舗ライヴハウスでした。そのシンガーは永年日本に住み、スクールで教えてもいて東京では名の知れたシンガーだったらしいです。でも、実は私も同様な印象を受けて、楽しめませんでした。そのシンガーは、何かの歌を唄っているときに、歌詞を忘れたらしく、メロディーをそのままに「I Forgot The Words!」となげやりに唄いました。英語が理解できる人にとっては明確な発音でした。英語が聞き取れない人には、絶対分かりません。私の耳には聴こえたために、その時点で「えッ?!」っとなってしまいました。日本人聴衆には英語は分からないだろうという考えが少しでもあったのでしょうか…。シンガーというよりエンターテイナーのようなステージングから「年輪」が感じられましたが、何か、唄い慣れきった印象を拭いされませんでした。
帰り道、Aちゃんが感じたことと、私が感じたことが一緒だったことに驚きを感じました。Aちゃんは英語は分からないけれど、歌を心で聴いているんだなぁと思いました。
…………………………………………………………
<その2>
「どうでした~?」と私。
「ん~、な~んか心に響いてこなかった…。」Mさんはポツンと言いました。

昨年の横浜ジャズプロムナード、とても期待して聴きに行ったライヴがありました。大きなホールで、管楽器の入ったビッグバンドのような威勢のよいバックも魅力でした。シンガーは美人、しかも実力派…らしい。けれども、期待していた分、初っ端から心が沈没してしまいました。

まず、歌詞カードファイルの譜面立てがステージの真ん中に置いてあったこと、これは失望。(まさかCDを売り出し中の人がそのCDの曲を演奏するのに、歌詞カードや譜面が必要?!プロでしょ?!)
声が悪い訳ではないし、ちゃんと出ているし、下手な訳でもありません。英語もまぁまぁだし、ステージングが悪い訳でもありません。美人だから鑑賞に堪え得るし…。バンドアレンジがビシっと決まったときには、彼女のジェスチャーもキマっていました。しかしそのMCは終始、自身のCDのことや、(ビッグな)誰それと演奏した…という経験のことが主。唄っている最中の「心」が彼女の身体から発信されていないような気がしました。つまり、単にショー的なパフォーマンス。「この場面ではこの視線、この角度、この位置」という風な…「型」がありました。見栄えは良いのですけれど。そして極め付きは、最後の曲のイントロが始まったとき、彼女はステージ上にある譜面台の歌詞ファイルを5-6ページ分、「大急ぎで」めくったのでした。その様子は興ざめでした。

それでも、会場は彼女のパフォーマンスに酔いしれていたように感じられました。
拍手の渦の中、まさか私たちのように感じた聴衆がいるなんて、思いも寄らないに違いありません。歌心が伝わってこないのでした。バンドのアレンジや豪華さだけが目立っていました。

その日の最後のステージがそんな風だったので、帰り道にオープンスペースから聴こえてきたピアノソロの演奏に釘付けに…。急いでその場に行き、最後の曲のほんの数分だけ、聴くことができました。そのピアニストは全身全霊、音に没頭して演奏していました。ほんの数分なのに深く感動しました。Mさんは列に並んで、彼のCDを買いました。ほとんど本能的な行為。あの威力って、やっぱりピアニストが音に込めた「心」が届いているのだと感じずにはいられませんでした。
…………………………………………………………
<その3>
たまぁに聴く度にボイス・テクノロジーが進化しているように思えるシンガーがいます。素晴らしくよく出る声です。その秘密を知りたいと感じるけれど、きっと無理!ハイテクです。

「どうだった~?」と私。いつも帰り道です。
「ん~、声はさぁ~いくら良くてもぉ、な~んか言葉が入ってこな~い。」とMaruさん。
Maruさんの感想にはいつもドキッとさせられます。英語が得意なわけではないはずなのに、言葉について、いつも触れます。きっと言葉の響きや言葉に込められる心に集中して聴いているのかなぁ…と思います。

実は私も同じ感想でした。声はいい、でも声以外のものが伝わってこない。心より声が勝っているような印象です。これはどういうことなのでしょう…?器楽的?言葉(心)よりヴォイステクニックが勝っている感じ…。英語が英語に聞こえてこないし、発音もところどころ全く正しくないのです。単にうっかり間違えたというのではなく、正しくないのです。とても勿体無い感じがします。言葉が正しくないならば、Voiceとしてのハミングかスキャットの方がずっと効果的かもしれません。楽器になればいいのです。でも、歌には言葉があるのだから…。

こんな風に感じる聴衆は少ないに違いありません。こわい聴衆です。
英語が理解できなくても、歌を耳や目で聴くのではなく、心で聴く人がいるということを忘れてはいけない。言葉に込められた心を聴いているのだと思います。
その言葉は、もちろん正しくなくてはいけないし、ごまかしてはいけない。
例えば、歌を演劇(自分を女優)に置き換えたとして、そのセリフが言葉として伝わらなかったらどうでしょう…?不味いです。

これらはすべて反面教師…。

自分がアマチュアだからといって軽んじることができないことです。
思い出すたびに、「だったら、自分はどうすればいいのか」と、いつも考えさせられます。
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Commented by ひかる at 2008-05-19 22:09 x
はじめまして。
ひよっこですが、シンガーしているものです。

シンガーさんたちが、普段どんなファイルで
譜面を持ち歩いているのかを探していて
たどり着きました。

私も、日頃思っている内容でしたので
コメントさせていただきました。

私はジャズの前はミュージカルを主とした
役者をしておりました。
なので、言葉というものにとても意味を感じます。
お芝居もそうですが、自分が気持ちよくなってしまったら、お客様には、「気持ちよく歌っている方」という姿しか伝わらないんですね。本質的なものは、とどかない。
私よりも、名があり、ベテランと呼ばれる方々のライブにも時々顔を出しますが、お酒片手に、マイク片手に、気持ちよく目をつぶって歌う姿は実に興ざめでございます。ファンやジャズ好きには受けても、一般の人には、内輪ネタで盛り上がっているようにしかみえませんよね。

私も、反面教師、勉強中であります。
一緒にがんばりましょう^^
Commented by TomTom at 2008-05-21 14:16 x
ようこそ、いらしてくださいました、ひかる様。はじめまして!
そして、コメントをありがとうございました。

「興ざめ」と感じるか否かの境界線は、本当に難しいですよね…。自己満足の世界か否かの境界線とも似ていますね。楽しいか楽しくなかったか、良かったか良くなかったか、それはどうしてなのか?純粋に楽しみたくて聴きに行くわけだけれど、スカの場合もありますね。いつも感性を研ぎ澄まして聴けるように努力していたいし、色々なものを沢山鑑賞して、自分はあんな風にはなりたくない、自分はこうでありたいという強い信念を抱いていないと、前に歩を進めることができないような気もします。

お互いに、頑張りましょうね!
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=663257930&owner_id=1142225
by tomtom2006T | 2008-04-26 15:40 | DIARY | Trackback | Comments(2)

ジャズ・マドンナ<十萌子>の、徒然なるままに・・・。


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